概要
東京地方裁判所で開かれている競売の入札がまもなく始まるのでBITを見ていたら専有面積3500平米のビルが32000円で競売に出ていたので気になったので見てみました。物件概要
江東区にある築24年のビルの9階から14階までのフロア全てのようです。専有面積は合計で3500平米程度で非常に大きく駅前なのでどのフロアも大手企業によるテナントが入っていました。
当然全く問題ないビルが32000円で買えるわけがないので安いのには訳があります。
不動産鑑定士が査定した物件の積算価格は約14.6億円で収益価格は約18億円です。
両者価格を考慮して物件の評価額は約16.3億円となったのですが、競売にかかったビルの貸主は借主の業者から敷金として約30億円預かったままなんです・・・。
今回の物件を落札した場合、落札者は借主の業者に敷金を返還する義務が発生してしまうので敷金相当分を差し引いて売却基準価格を設定しています。
16.3億円から30億円を引くと14億円のマイナスとなってしまいますが、マイナスの価格で競売に出すこともできないので仕方なく32000円で競売に出たというわけです。
16.3億円という価格はあくまで不動産鑑定士が評価した金額なので入札を検討されている方がこの物件に30億円以上の価値があると判断すれば入札があると思いますがおそらく誰も入札しないと思います。
敷金の返還義務について
今回の物件を落札した場合には既に契約中の借主に敷金を返還する義務がありますが、返還義務が無い場合もあります。建物の賃借人(借りている人)が、競落人(競売の落札者)に対して賃借権(物件の借主である権利)を主張できるためには、以下2つの前後関係が重要となります。
物件に抵当権を設定された日
賃貸借契約を締結した日
賃貸借契約締結時点で抵当権が設定されていない場合
この場合、借主に落ち度は何もありませんので賃借権を主張できます。退去する義務はありませんし退去時には預けた敷金も返さないといけません。
賃貸借契約締結時点で抵当権が設定されている場合
借主は万が一競売にかかる可能性もあることを知りながら賃貸借契約を締結したことになります。この場合、借主は賃借権を主張できません。
落札後6ヶ月以内に退去する必要がありますし敷金も返還されません。
※実態としては落札者との話し合いにはなります。
現在は抵当権が付いた物件の賃貸借契約を締結する際には「重要事項説明」で競売にかかってしまった場合のリスクについて説明する義務があります。
私の2棟目アパートも抵当権が付いていますので契約時には借主に「重要事項説明」で下記のような説明をしています。
とはいえ20歳前後の借主が説明を受けても理解できているとは思えませんが・・・
結論
当然ですが都心のビルをデメリットなく32000円で買うことはできません。物件を借りる人は賃貸借契約を結ぶ際に、物件に抵当権が設定されているかチェックする必要があります。
競売で物件を入札する人は敷金を返還する義務があるかないかをチェックする必要があります。
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