プロパンガス法改正と既存オーナーへの影響

日記

概要

プロパンガス(以下LPガス)に関する法改正内容について色々と報じられています。

私もLPガス物件を持っているのですが、法改正の概要を解説して今後既存オーナーへどういった影響があるか記載します。

LPガススキームの闇

アパート・マンションオーナーにとってLPガススキームは誰もが知っているものだと思いますが改めて概要を説明するとこんな感じです。

  • 物件にLPガスを導入する見返りにガス会社から過剰な設備貸与を受ける
  • LPガス設備貸与契約とガス供給の契約を締結
  • ガス会社はガス料金を高く設定して入居者のガス料金に転嫁することで設備代を回収

LPガスを導入するためには「ガス配管」「ガスメーター」などある程度の設備(供給設備)が必要ですが、例えば「エアコン」「給湯器」「インターネット無料」などガス導入に直接関係ない設備(消費設備)までガス料金に転嫁することが主に経済産業省の中で問題視されています。

オーナー側にとっては物件を建てたり中古物件を購入する際に設備導入費用の一部をガス会社に負担してもらうことで安く物件を所有することになりメリットですが、その皺寄せが入居者に行ってしまうことになります。

LPガス関連の法改正

上記問題に対しては物件を借りる人の中でも「プロパンガスは高い」という意識は定着しつつあります。

賃貸借契約時に入居者への説明とガス料金明細に設備貸与料の明記が義務化されたりしています。

それでもこういったスキームが是正される気配がないためついに法改正される動きになってきました。

既にニュース等で報じられていますが2024年をめどに以下の法律を改正する方向で経済産業省を中心としたワーキンググループで議論をしている最中です。

具体的には下記施行規則に過大な営業行為の制限に関する条文を新設する方向になるらしいです。

液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律 16条2項

液化石油ガス販売事業者は、経済産業省令で定める基準に従つて液化石油ガスの販売(販売に係る貯蔵を含む。次項、第二十条第一項、第二十一条第一項及び第八十七条第二項において同じ。)をしなければならない。

施行規則16条(販売の方法の基準)

法第十六条第二項の経済産業省令で定める販売の方法の基準は、次の各号に掲げるものとする。

現在議論されている改正内容としてはこんな感じらしいです。

① LPガス事業者は、賃貸集合住宅又は戸建ての消費者とガス契約を自己と締結させることを目的として、賃貸集合住宅のオーナー又は戸建ての消費者等に対し、正常な商慣習を超えた利益を供与してはならない
② 賃貸集合住宅のオーナー又は戸建ての消費者等との間で、LPガス事業者の切替えを制限するような条件を付した貸与契約等を締結してはならない

正常な商慣習を超えた利益というのはいわゆるエアコンとか過剰な設備貸与をして契約するなってことです。

LPガス事業者の切替えを制限するような条件というのは、オーナー側に対して過剰な違約金を設定したり、貸与済みの設備の買い取り金額を異常に高く設定して、事実上ガス会社の切り替えを抑制するなってことです。

これって一昔前の携帯事業者に対する制限と全く一緒なんですよね。

ちょっと前まで一括1円でiphoneなどの高額スマホを提供することで契約を促したり、2年縛りとかで解約を抑制するのが当たり前でしたがいまはこういった契約は全て制限されたので、今の携帯契約はものすごくクリーンになりました。

おそらくLPガスもこういった感じでクリーンな方向に変わっていくと思います。

LPガスってどのくらい高い?

LPガスを物件に導入しているオーナーは多いと思いますが、ほとんどのオーナーはガス会社が入居者にいくら請求しているか把握していないと思います。

一般財団法人日本エネルギー経済研究所 一般小売価格 LP(プロパン)ガス 速報より抜粋

上記ガス料金は「基本料金」と「従量料金(㎥)」を全て含んだ税込み金額で、関東で単身者の平均使用量の5㎥だと全国平均より安く5128円です。

一方下記は東京ガスの料金表です。

都市ガスとLPガスの料金を比較する際は、熱量が違うために都市ガスの従量単価に×2.23をする必要があります。

従って東京の都市ガスでLPガス5㎥相当のガスを使用した場合の料金はこちらになります。

759円+(157.75円×2.23)×5=2,517.9円

従って都市ガス2517.9円とLPガス5128円を比較するとLPガスが約2倍の高額となっています。

ちなみに私のLPガス物件はこんな感じで関東の全国平均より少し高いです。

基本料金 従量料金(㎥) 5㎥使用時の料金
2530円 597.3円 5,516.5円

物件を建築する際に業者に「都市ガスに比べて料金はどの程度高くなるのか?」と聞いた際に「高くても1.4倍程度になる」と言っていたのですが蓋を開けてみたら都市ガスの2倍の料金でした。

従ってLPガスを導入してしまったことをすごく後悔していて過去にブログに書いたこともあります。

今後の予想

まず法改正自体はほぼ確実にされると言われています。

法改正によってLPガスの新規契約およびガス会社の契約延長時やガス会社変更時などは設備貸与してもらうことはできなくなります。

既にLPガスを導入してしまっているオーナーが今後どうなるのかが気になるところですが、法改正内容を既存契約に対して遡及して適用しない方向で検討されているようです。

建築基準法で例えるなら既存不適格といった感じでしょうか。

第6回液化石油ガス流通ワーキンググループ事務局提出資料より

ただこの場合でも経済産業省は以下の三部料金制の料金制度を徹底するよう求めていて、賃貸住宅においては基本的に「設備料金」は入居者に計上することはできなくなるのですが、既存契約の場合は法改正後も「設備料金」が記載されてしまい入居者からクレームが来たり退去の原因になると思います。

  • 基本料金
  • 従量料金
  • 設備料金

今後のプロパン物件の中でも新築・築浅物件は「設備料金」がかからないのに法改正に対応できない築古物件だけは「設備料金」がかかってしまうという賃貸物件の中でもかなりマイノリティな存在となっていくでしょうから、入居希望者に物件紹介時にはこんな感じのやりとりになっていくかもしれません。

 
賃貸営業

こちらの物件はプロパンガスとなりますが、その中でも特にガス料金が高い物件になります。

入居希望者

え、、じゃあやめときます

こんな感じで賃貸運営に影響が出てしまうのではないかと思っています。

あと法改正内容が既存契約に対して遡及されることとなった場合は貸与設備の一括返済を求められる可能性もあります。

LPガスにすることのメリット(火力が強い・災害に強い)もありますし、インフラが整ってない地域でLPガスしか導入できない場合もありますので一概には言えないのですが、今後オーナーが建築費を安くするために安易にLPガスを導入するのは避けたほうがいいと強く思います。

私は既にガス会社の切り替えも視野に入れつつ、貸与設備を一括で返済することを条件にガス料金を下げる交渉を複数のガス会社と行っている最中ですので何かありましたらまた記載します。

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