概要
先日病院開業に関するセミナーに参加してきました。不動産以外のセミナーに参加するのは久しぶりなのですが開業に関するノウハウがないので色々と参考になるセミナーでした。
セミナー内容
既に開業している開業医や、これから開業を検討している医師向けに病院を開業する際に注意すべき点などをわかりやすく説明して頂けました。最後に個別相談まで受けたのですが合計5時間の長時間なセミナーでした。
医師に対する技術的なセミナーではなく経営に関するセミナーであり、医師は経営に疎い方も多いのでそういった意味では初心者向けの内容だったかもしれません。
考え方としては不動産賃貸業としてアパートやマンション建築を検討する際と大きな違いは感じませんでした。
立地選定のポイント
事業計画・資金計画
開業医として成功するためのノウハウ
ネット広告する際の注意点
個別相談
立地選定のポイント
開業形態と費用
開業医ですからいわゆるクリニックを開くという形になります。「土地から購入してクリニックを建てる」場合ですと費用が1億以上かかるようです。
「駅前のビル内に診療所を開く」場合5000万円前後で開業できるそうで、都心の賑わっているエリアでよく見かける形態ですが競合が多かったりします。
「ドクターズレントハウス」という形態があってこちらも5000万円前後で開業できるそうで、クリニックを開業する前提で地主に建物まで建ててもらって開業する側は内装と機器の準備をすれば良いというものです。
今回のセミナーは大手の財閥系建築会社のためこの形態で建物を建ててもらうことで利益が出るのでこの形態を勧めていました。
建物を借りて開業する場合は「定期借家契約」となるので賃貸借契約終了以降に再契約してもらえないと廃業・移転を余儀なくされてしまうリスクはあります。
診療圏調査
診療圏調査は、開業場所の選定をデータ面から検証する作業であると同時に、事業計画を作成する上での見込患者数を算出する資料となります。ざっくり言うと周辺の人口と競合クリニックの数から開業した際に1日にどのくらい患者がやってくるか?を判断する指標となるデータです。
不動産賃貸業と違うのは不動産を購入する際に賃貸需要がどの程度あるのかを定量的に計る指標ってあまりない気がするのですが病院開業については需要を計る定量的データがあるということです。
ただ調査通りに患者がくる保証はないのであくまで参考程度に留めたほうがいいかなと感じました。
所感
不動産賃貸業と違うのは駅前で開業したからといって必ずしも有利ではないということです。駅前のほうが需要の数は当然多いですが競合のクリニックも多くあるため必ずしも開業した際に来院してくれるとは限りません。
また、医業の場合診療報酬というものが決まっているので駅前で診ても郊外で診ても一人辺りから貰える金額は同じです。
そうなると郊外のほうが投資額は当然下がりますのでアリということになります。
郊外で周辺住民から徐々に認知されていってリピータを増やしていくというのが良いのかと感じました。
事業計画・資金計画
税理士さんが開業した後のお金に関する説明をしていましたが初心者向けのものでした。「借入金をした際の元本や院長の生活費は経費にならないから税務上は黒字でもキャッシュフローとしては赤字になる場合があるので気をつけてください」とか
「開業準備の支出は開業後に経費にできますが経費化のタイミングは調整できるので所得税率が高くなったタイミングでやったほうがいい」とか
「所得税の仕組みとか青色申告とか専従者給与」とかの基本的な解説でした。
不動産経営をしている人にとってはお馴染みな内容です。
お金絡みに関しては経験があるので大丈夫だと思います。
開業医として成功するためのノウハウ
実際に開業された方が開業医として成功するためのノウハウについて語っていました。この方は都内10ケ所に開業しており医師を160人雇用して経営されているので医師というより事業家な感じですが今でも診察をしており365日ほぼ休まずに仕事をしているようです。
需要の良い立地で開業して資金計画をしっかりと立てていたとしても開業後に患者から信頼関係を築けないと患者数は増えていかないということです。
賃貸経営でも良い立地でキャッシュフローがしっかり出るアパートを建てたとしても入居者と信頼関係を築けないと長期入居は望めないというのと同じですね。
賃貸経営と違うのは地元のクリニックは患者からの口コミ要素が大きいので結局成功するか否かは医師の資質によるものが大きいのだと思います。
あとは「悪質なコンサルタントに気をつけろ」と言っていました。
開業する際に高い値段でコンサルしたり高い値段で設備投資をさせるだけさせて開業したら逃げてしまうそうです。
不動産業界でも全く同じ状況が問題となっていますが・・・。
あとは「スタッフの雇用が大変」なようです。
「医師を雇う際に彼らはプライドが高いので雇用ではなく招聘する立場で採用してからもしっかりと給与を払って良い待遇で働いて頂かないと彼らは超売り手市場のためすぐ退職してしまう」そうです。
看護師や事務員を雇う際も最初は個人事業主で開業する方が多いので採用スタッフが5名以下だと社会保険に入らなくて良いので社会保険に入れない職場は敬遠される傾向にあるそうです。
ネット広告する際の注意点
開業したあとにネット広告は必須となります。不動産賃貸業の場合は募集の際は基本的には仲介会社に依頼する形になるので大家が直接募集することはありませんが私の場合はトランクルームを運営しているので直接ネット広告を出してます。
開業したとしても病院の経営環境として「診療報酬額が下がり」「人口減少によって患者数も下がり」「賃金・仕入れなどのコストアップ」があるので決して左団扇というわけではないようです。
不動産賃貸業も同じような状況ですが、結局「開業医もネット広告を効果的に打って差別化しないと生き残れない」という感じの話でした。
あとは「誇大広告などを出すと業務停止や免許停止になるので気をつけましょう」といった感じのはなしでした。
宅建業も誇大広告などを出すのはNGなので同じですね。
個別相談
その後担当者と個別ブースで色々と相談に乗ってもらいました。この辺りの流れは不動産セミナーと一緒ですね。
妻はまだ開業するような年齢でないので当分開業するつもりはないという前提で色々と話を聞きましたが大体このような感じでした。
思っていたより金利とかも低かったので開業に対するリスクは低いと金融機関から判断されている証拠だと思いました。
「例えば耳鼻科の場合だと40代くらいで開業する方が多い」
「開業の目安として1日平均60人くらい患者が来院する地域でないと勧めない」
「その場合の売上は22日営業×60人×3000円(平均単価)=396万円くらい」
「仮に5000万円融資を受けて開業する場合、金利は1.2~1.3%で15年返済ぐらいが普通」
「その場合の費用は返済36万+人件費80万(看護師2人+事務員2人)+家賃50万円となり残りが開業側の収入となる」
「15年で借りても経営がうまく行く人は7年くらいで返済してしまう」
「開業する人で一番多いのが定年後も働きたい人で、次が夜間当直などがなくワークライフバランスがある働き方をしたい人」
1時間くらい相談に乗ってもらってたのですが台風が直撃していたので帰宅しました。
まとめ
不動産賃貸業と比べると圧倒的に成功する確率は高いと感じました。基本的にラーメン屋などの参入障壁が低い業種ではないのでしっかりとした経営感覚を持って開業することと、開業したあとに患者から信頼されて口コミを広げてもらって徐々に地域に根差していくという形を取れば何とかなる気がします。
患者を診察するのは私ではなく妻になるので妻にその気がないならそもそも絵に描いた餅ということになりますが、妻にその気があるのなら私なりにバックアップはできるのでは?と感じたセミナーでした。
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