概要
2月に竣工した「3棟目アパート」の工事が遅延したことで一部設備の提供が賃貸借契約開始時に間に合わなかったのですが、賃借人側から賃料返還請求を受けた対応について記載します。
契約内容
アパートは地元の法人に一括で借り上げてもらっており法人の社宅となっています。
賃貸借契約は下記となります。
・契約開始は2020年3月1日
・契約中の入居者入れ替え可
遅延内容
新築工事では往々にしてあるのですが建築遅延により予定通り引き渡されませんでした。
結果として3月1日時点で外構関連を中心にいくつかの工事が間に合いませんでした。
抜粋すると以下の設備やサービス提供が遅延しました。
1.サイクルラック(3月5日に8台設置、3月10日に5台設置)
2.ダストボックス(3月19日に設置)
3.エントランスアプローチ改修(3月6日に改修完了)
4.室内の微細な傷など補修対応(3月5日に対応済)
5.インターネット無料設備(3月10日より利用可能)
当時の状況は下記に記載しております。
3月に遅延した際には仲介業者経由で謝罪したつもりだったのですが賃借人からは何も言ってこなかったので直接謝罪はしなかったのですが後々それが裏目に出ることになりました。
電気契約切替トラブル
きっかけはライフライン(電気)の切り替えで賃借人とトラブルになりました。
工事中の室内の電気契約は建築業者名義で行われています。
契約名義を切り替えないといつまで経っても建築業者に電気料金の請求が行ってしまうので賃借人に鍵を引き渡す際に「電気ガス水道の契約切替は速やかに行ってください」と伝えていました。
本来は下記図のように3月1日の賃貸借契約開始時点で全ての部屋の電気契約を賃借人の法人名義に切り替えてもらって、法人の社員が入居次第順次切り替えてもらうことが理想なのですがそうはなりませんでした。
法人の社員は3月下旬から続々と入居し始めて、3月中にはほぼすべての部屋で入居となったのですが、電気契約の切り替えはスムーズに行われておらず、3月中旬から4月中旬頃までのほとんどの部屋の電気料金の請求が建築業者へ行ってしまいました(3月中旬までの電気料金は誰も入居していなかったので建築業者が払ってくれました)。
5月上旬に建築業者から連絡が来ました。
電気料金のご請求が弊社に来ました。
全居室まだ変更手続きが行われていないようですので入居者様へアナウンスをお願い致します。
すぐに賃借人の法人の責任者に状況を伝えて切り替えを促すとともに、建築業者へ請求が行ってしまった金額については私に直接支払って頂くよう連絡して速やかに支払って頂けましたので一件落着と思っていました。
ですが5月下旬に仲介業者から連絡がありました。
責任者の方が電気料金の切り替えについて不満を感じているようです。
詳しく話を聞くと「電気を切り替えようとしたが建築業者が契約名義になっていてGW明けまで切り替えられないと東京電力に言われた」ようなことを言っていました。
ちなみに各部屋の切り替え日をチェックしてみると下記のようになっており早い入居者だと3月中に切り替えている人もいるので切り替えられないことはあり得ないと思うのですが責任者の方は社員の入居者が言うことを信じて私に対して不審感を覚えたのだと思います。
切り替え日 | |
101号室 | 4月16日 |
102号室 | 4月17日 |
103号室 | 4月10日 |
104号室 | 5月8日 |
201号室 | 未対応 |
202号室 | 4月10日 |
203号室 | 3月21日 |
204号室 | 5月14日 |
301号室 | 5月12日 |
302号室 | 3月28日 |
303号室 | 4月4日 |
304号室 | 5月1日 |
あと責任者の方は工事が遅延したにもかかわらず3月からの電気料金の全ての請求をされたと誤解してしまったようです。
賃料返還請求
正直何故賃借人の責任者が不満に思っているのか理解できなかったのですが工事遅延も含めて色々とご迷惑をおかけしたのは事実ですので私のほうから賃借人の責任者の方に電話で直接謝罪しました。
5月末頃の事です。
この度はご迷惑をおかけしまして申し訳ありません
いえいえ。こちらこそ切り替えが遅れて申し訳ありません
工事も遅延して色々とご迷惑をおかけしました・・・
その件ですがもし可能でしたら遅延した分の賃料を一部返金頂けないでしょうか?
わかりました。
金銭が絡みますので仲介業者と相談しながら進めさせていただきます。
というわけで3月に遅延した件について思わぬ形で賃料返還請求を受けることとなりました。
仲介業者に相談
かくかくしかじかで賃料返還請求を受けました
そうですか・・・。
ざっくりと○日分の賃料を返還する形でいいんじゃないですかね?
うーん・・・
私としては迷惑をおかけしたのは事実ですので返還すること自体は構わないのですが返還する金額には根拠を持たせたいです
仲介業者も今回のトラブルは本来の業務範囲外といった意識を持たれているようであまり関与したくない感じが伝わってきたので私のほうで賃料を返還する資料を作成することにしました。
賃料返還資料作成
その後、仲介業者経由で「賃借人側はインターネット無料設備が3月10日まで利用できなかったので10日分の賃料を免除して欲しい」と連絡がありました。
10日分の賃料返金となれば27万3000円ぐらいの返金となるので結構大きいです。
うーん・・・。言いたい気持ちはすごくわかるのですが賃貸借の世界で設備の一部が使えないからといって賃料全額免除してくれって主張を受け入れるのは難しいんですよね。。。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会による「賃料減額ガイドライン」というものがあります。
国交省が出している「原状回復ガイドライン」同様に賃貸借関連で発生する費用について一定の根拠をもとに相場を提示してくれています。
考え方の基本としては下記となります。
- 外構設備の不具合は減額対象外
- 状況ごとの賃料減額割合に応じて減額
- 減額にも免責日数がある
改めて提供遅延した設備やサービスは下記となりますが、1~3については外構関連の遅延で減額対象外と判断しました(実体としては賃貸借開始から自転車もゴミも捨てられる状態ではあったので)。
2.ダストボックス(3月19日に設置)
3.エントランスアプローチ改修(3月6日に改修完了)
4.室内の微細な傷など補修対応(3月5日に対応済)
5.インターネット無料設備(3月10日より利用可能)
・10日遅延に対して免責日数が3日のため7日分の賃料返還
今回の賃貸借契約は民法改正前ですので突っぱねるという選択肢もあったかもしれませんが、賃借人と関係を悪化させても仕方ないので私はガイドラインに応じた金額の返金をする選択をしました。
賃料返還内容合意
その後、仲介業者経由から「キリが良いところで賃借人の責任者の方と20000円で合意となりました」と連絡がありました。
賃借人側も外構関連の遅延で返金を求めることが難しいことなどは理解してもらえたようです。
あまり覚書を交わすなど大事にはしたくなかったので、仲介業者から関係者全員にメールにて「本件は2万円返金で決着する」旨の連絡をしてもらい、私から賃借人に2万円振り込んだので一応この件は解決となりました。
ただ、賃借人の責任者が完全に納得しているのか、内心は納得しかねているのかはわかりませんので今後も些細なことでトラブルに発展する可能性を秘めている状態です。。。
まとめ
今回は賃借人側から賃料返還請求を受けて私が取った対応について記載しました。
今回の返還請求の原因はほぼ感情的なものです。
賃借人側としては工事遅延したにもかかわらず私サイドから直接謝罪がなく、不信感があった状態でライフラインの請求などしたことで爆発したのだと思います。
実はそれ以前にもプチトラブルがありまして「入居者の連絡先を教えてください」とお願いしたら難色を示されたりもしてました。
個人情報の観点から難色を示されたのですが管理する以上、緊急時に連絡できないと困りますし賃貸借契約書にも入居者の連絡先を教える旨記載しているので最終的には教えてもらえましたが・・・
私が取った対応としては賃料返金することは一向にかまわなかったのですが、金額に根拠を持たせないと今後も設備不具合などのトラブルがある度に同じような問題を抱えてしまうのでガイドラインに沿って返金対応を取りました。
一括借上げしてもらった場合、賃借人と問題なければ安定した運営ができて良いのですが、逆に賃借人とトラブルになるリスクを感じました。
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